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寺沢大介『食いタン@

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寺沢大介『食いタン@』(講談社)
★★★☆☆

「安カレーが深皿に入ってる理由知ってるか?」
「知りません」
「平皿に盛るとな 具が全然入ってないのが丸分かりだからだ」
(P.204)

 殺人現場の食材だろうが他人の料理だろうが、とにかく食って食って食いまくる探偵、高野聖也の活躍を描く、前人未踏のグルメミステリ。

 ミスター味っ子、将太の寿司などの作者だけあって、食材や料理の博識ぶりは言わずもがなの上、料理漫画で培ったストーリーテリングの才能が、畑違いのミステリジャンルにおいても遺憾なく発揮されている。単純な食材知識問題だけに終始せず、犯行をめぐる関係者の心理描写などにも配慮の行き届いた展開が秀逸だ。

 1巻のお気に入りは、犯人・凶器・動機の謎がバランス良く絡み合った第1話『マスカルポーネを喰う』と、高野の洞察力・推理力・行動力が見事に表現された『カップラーメンから新ソバまで喰う』。どちらも甲乙付けがたい出来。

 ただ唯一残念なのは、作者にミステリや犯罪捜査の知識が不足しているところ。解決編の意外性は十分なのだから、その辺りを作者が少し勉強すれば、隙のない本格ミステリ漫画になるだろう。

 推理漫画の新風が意外な方面から吹いてきた感じ。継続買い決定。 to top


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