あのスーパーマリオブラザーズが、大魔王クッパに攫われたピーチ姫を救うために大活躍する、しばらく前の物語。まだ生まれたばかりの赤ん坊のマリオを背に乗せたヨッシーが、カメ一族に攫われたルイージを助け出すべく、島中を駆けめぐる。
画用紙にクレヨンで描いたようなほのぼのとしたグラフィックとは対照的に、アクションゲームととしての難易度は結構高め。ジャンプ、ダッシュ、攻撃ぐらいしかアクションの無かったマリオに比べ、ヨッシーは遙かに多くのアクションをする。しかも、それらをある程度使いこなせるようにならないと先に進めない(ご親切に各所で説明はされているが)ようになっているのだ。
さすがに、絵面からは想像できない難易度のギャップを埋めるためか、アクション苦手な人向けの措置も随所に施されている。ヨッシーが敵に触れても、赤ちゃんマリオが飛んでいくだけで、スター(体力ゲージ。ちなみに時間によって回復する)が尽き、敵がマリオを攫っていく前にマリオを回収すれば、残機数をロストせずに済んだり、落下に抵抗を掛ける踏ん張りジャンプ、引っ掛かりやすいトラップの前の警告、いつの間にか溜まっている豊富なアイテムといったアクション面へのサポートも万全だ。
しかし、スタッフは肝心なことを忘れている。もとい、知っていて対策を打たず、陰で嘲笑っている。それ即ち、コインの存在をだ。
マリオでコインといえば、ステージ中に散らばっていて、100枚集めれば1UPするというボーナスアイテムだ。遙か昔のゲームには必ずと言っていいほど存在した無機的な「得点」の概念を、そのままアイテムにしただけのものである。そして、裏技の無限残機UPやコンティニューの存在によって、当初から無用の長物だったものでもある。
だが、だがである。我々は、そこにコインがあると、ついつい取ってしまうのだ。麻薬に対する麻薬常習者のように、ラッキョに対する猿のように(いや、これは信憑性がいまいちだが)、画面上にコインを認識したが最後、すべて取り尽くさないと、もう気持ち悪くてたまらないのである。落下中、右が陸地、左が火の海だとして、火の海の上にコインが並んでいれば、10人中9人が、ぎりぎりまで左に身をよじるという統計が出ている。
嘘ではない。下を見てくれ。
ほらほら、取りたくなってきた。
まあとにかく、そういうわけで、いかな救済措置が採られていようと、ヨッシーは無謀にもコインに吊られて正規ルートを外れ、穴に落ちるのである。欲張りなヨッシーの墓がヨッシーアイランド中を埋め尽くすのである。これが陰惨な罠でなくて何というのであろう。くそう、スタッフめ! 卑怯だぞ。
まあ、楽しいんだけど。コインを無視すれば10倍は早くクリアできたんだよなあ。
あ、内容の話をしていなかった。ええと、このゲームの醍醐味はボスステージ(砦や城)に尽きると思う。飛んだり跳ねたりとアスレチックがメインの各ステージは、結局コイン集めに奔走するせいかクリア後の印象がいまいち薄いのに対し、ボスステージでは先に進むのに扉の鍵などを探す必要があり、これがちょっとした謎解き風味になっていて好印象。
ヨッシー悩みながらあっちへ行ったりこっちへ来たり。頭を捻ってようやく扉を開くと、そこではボス敵(巨大化したザコなんだけど)との対決が待っている。これがまたアイデア抜群の戦闘方式で、ほぼ毎回違ったルール(倒し方)が存在する。基本的には敵の弱点や倒し方を見抜き、タマゴをぶつけて倒すんだけれど、その弱点がなかなか見抜けなかったり、見抜けてもヨッシーの特殊アクションを駆使しなければならなかったりと、奥が深い。
例えば、カエルのボス。いつもはカメ魔法使いの魔法でボスが巨大化するんだけれど、今回は逆にヨッシーが小さくなってしまう。そしていきなりカエルに食われる。舞台はカエルの胃袋に移動し、何とそこが戦場。胃液がポタポタ降ってくる狭い胃袋の中で、ヨッシーはどうやって戦うのか。……といった感じ。スーファミ特有の画像処理が効果的に使われており、視覚的にも楽しい。
ただ、やっぱりボス面は一発ネタだし、メインとなる通常面に少々パンチが足りない事は否めない。よく練り込まれているとは思うが、難易度の高さがそれを十二分に満喫するだけの余裕を与えてくれないのだ。よって全体的な印象としては、ちょっと食い足りない感じだが、決して悪いゲームではないので、多彩なボス戦を見るためだけにでもやる価値は十分にある。
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