movie


パニック・ルーム
千と千尋の神隠し
名探偵コナン ベイカー街の亡霊
閉ざされた森

impression home



パニック・ルーム
★★★☆☆
PANIC ROOM (2002)

監督:デビッド・フィンチャー
脚本:デビッド・コープ
キャスト:ジョディ・フォスター,フォレスト・ウィテカー,ドワイト・ヨーカム

 デビット・フィンチャー監督の最新作。彼の映画は、ケレン味たっぷりのストーリーとどこまでも予定調和などんでん返しのために、私の中ではいつも評価が低いのだが、常に客を騙そう騙そうとする意地悪な作品作りの姿勢自体は好きなので、つい毎回期待してしまう。

 そんなわけで、なるべく純粋なサプライズに有りつこうと、前情報を何ひとつ仕入れずに観に行った。そして轟沈。

 しまった。こういう話だったとは。私はまた、シックス・センス的似非サイコホラーのような話かと思っていた。開始後すぐに敵側の視点が映し出された時点で、主人公側との心理戦を描くタイプの話にしか成り得ないとわかり、落胆。こうなると、この監督、予定調和な展開を崩さないからなぁ。ファイト・クラブの例もあるんで、ほんの少しはラストに期待したんだけど、駄目だった。残念。

 まあ、私個人がデビット・フィンチャーに期待していた部分が外れた、というだけで、一軒の家という密室内で繰り広げられる頭脳戦、というものを描いたサスペンス映画としては、それなりの出来。部分的に御都合主義的、あるいは不自然な展開はあったものの、息詰まる攻防戦には結構はらはらしたし、拍手できる演出や展開も幾つかあった。

 でも、それはデビット・フィンチャーじゃなくても作れる、脚本上の要素でしかない。この映画全体を俯瞰すると、突出した個性がなにもないことに気付くのだ。少々の整合性など無視してでも、この映画でしか味わえないような「売り」を入れて欲しかった。これなら、フルCGやワイヤー・アクションなどに安易に固執した映画の方がよっぽど見所があると思う。 to top



千と千尋の神隠し
★★★☆☆
千と千尋の神隠し (2001)

監督・脚本:宮崎駿
制作:スタジオジブリ
キャスト:千尋:柊瑠美,ハク:入野自由,湯婆婆・銭婆:夏木マリ,釜爺:菅原文太

 今更になってようやく観賞。

 うん。面白かった。娯楽映画として良くできていると思うし、純粋に各場面場面を楽しめた。妖怪ものだし。

 よって作品の完成度自体に特に不満はないのだが、予想していたほどのテーマ性やメッセージ性はなかったかな。別に共産主義的思想も教訓めいたお説教もメインじゃなかったし、気負っていた分(いや、共産主義嫌いだし)拍子抜けすらした。

 「三枚のお札」のような、よくある民話的展開だし、千尋が油屋で働かされる場面も、「こぶとり爺さん」が鬼の前で踊るのとそんなに変わらない。

 日本民俗学的ガジェットや、「フジヤマ・ゲイシャ」みたいな他国の認知する似非和風テイストが絵面や演出に詰め込まれているので、外国人受けするのはよくわかるんだけれど、アニメーションの質以外は特に感動するような話でもない(声も相変わらずヘタレだし)から、本来は日本でここまでのヒットを記録するような大作ではないと思う。やはりジブリのネームバリューがすごいということかな。

 カオナシやハクの存在など、もう少し伏線を張ったり、ふくらませても良いような部分はたくさんあるけど、長くなりすぎるからなぁ。せめて腐れ神とカオナシのエピソードは一つにまとめても良かったかも。

 あと、後半で鍵婆を訪ねる展開以降、話ががらっと変わってしまったみたいに感じる。あの銀河鉄道999みたいなシーン自体も好きなことは好きなので、もう少し前半のストーリーと絡めて欲しかった。結局、鍵婆って何もしてないから、シーン稼ぎのような印象があるんだよね。

 とまあ、不満はないと言っておきながら、結構文句ばっかり書いてしまったが、冒頭に挙げたとおり、楽しめたのは確か。もののけ姫よりはよっぽどいい。

 忙しい現世を離れた温泉郷で付喪神や妖怪たちと戯れるなんて、実にいい休暇だなぁ。是非行きたい。 to top



名探偵コナン ベイカー街の亡霊
★★★★
名探偵コナン ベイカー街の亡霊 (2002)

監督:こだま兼嗣
脚本:野沢尚
制作:「名探偵コナン」製作委員会
原作:青山剛昌
キャスト:江戸川コナン:高山みなみ,毛利蘭:山崎和佳奈,毛利小五郎:神谷明,工藤優作:田中秀幸

 漫画もアニメも大人気の名探偵コナン。映画もヒットを重ね、ついに今年第7作目が上映。どの作品も安定して出来が良いと聞き、途中の作品までしか見ていなかった私はついに思い立って一気に借りてきた。

 で、第6作目がこれ。シリーズ最大の異色作との話で、最後までとっておいたのだが(ちなみに前作までは確かになかなか面白かった)……

 うわあ。すっげえ話。こんなもの子供に見せていいのか。映画館で一緒に見た付き添いの親たちは、きっと見終わって固まってるんじゃないだろうか。娯楽に見えないよなあ、全く。

 ストーリーはこんな感じ。日本の教育制度に馴染めず、アメリカの大学で人工知能の研究をしていた天才少年プログラマー、ヒロキは10歳にして自らの命を絶った。2年後、彼の親代わりだったIT業界の帝王、シンドラーは日本と共同開発していた全く新しいバーチャルリアリティーゲームを発表する。そのお披露目パーティーに招待されたのは、日本政財界トップとその2世、3世たち。財閥令嬢である蘭の友人、鈴木園子に招待され、コナンたちも会場に来ていた。しかし、パーティーの最中、開発責任者の一人が殺される。コナンは犯人を示すヒントがゲーム内にあると知り、ゲームをプレイ。ところが、それはもっと大きな『犯人の罠』だった……

 まあ、よくあるタイプの仮想空間ものなのだが、まずこの『犯人』の動機がうまい。最初に聞くと馬鹿馬鹿しく思える計画にリアリティを与え、さらにそれをひっくり返す展開は見事。話全体としてのミステリ度は低く、殺人事件の謎は無きに等しいのだが、動機メインの話と考えれば及第点が上げられる。

 それはいい。話の展開上とはいえ、世襲制などに対する皮肉があざとく出てくるのも、まあそういうものを子供に見せたかったんだろうと考えればある程度納得。

 問題は、コナンたちがバーチャル世界である100年前のロンドンで体験するシャーロキアン趣味全開なアトラクション。これはやりすぎ。今の小学生って、ホームズ読んでるのか? レストレード警部、ハドソン夫人、モリアーティ、アイリーン・アドラー、バスカヴィル家、ライヘンバッハの滝、チャリングクロス駅、などなど。わかんないだろ。っていうか、俺が懐かしいっての。

 やっぱり専門用語すぎると思ったのか、新しい単語が出るたびにその都度解説が。「ベイカー・ストリート・イレギュラーズは、僕たち少年探偵団の先輩みたいなものなんだ」……私はとても楽しいが、果たしてこれでいいのか?

 そんなわけで、これは正に、子供のころにこんな映画を見ていたらさぞや楽しかっただろうな、ってシャーロキアンが自分の願望を押し付けた作品かと。

 名探偵コナン映画としては、キャラを生かせていない、トリックがない、説教臭い、とペケ3つなんだけど。まあ6作も作ってりゃ、中にこういう奴が1つくらいあってもいいかもね。

 あと個人的に惜しいと思ったのは、クライマックス前で犯人を追い、チャリングクロス駅発最終列車に乗り込んだシーン。犯人は変装して乗客に紛れ込むんだけど、時間の都合上あっさりとコナンが見破ってしまう。ここで犯人がクリスティーばりの殺人事件を起こし、その謎を解くという展開をある程度の尺でやってくれていたら、5つ★の傑作になり得ていたかもしれない。そう思うと、ちょっと残念。 to top



閉ざされた森
★★★★
BASIC (2003)

監督:ジョン・マクティアナン
脚本:ジェームズ・ヴァンダービルト
キャスト:ジョン・トラボルタ,コニー・ニールセン,サミュエル・L・ジャクソン

注意!ネタバレはありませんが、多分に本作品に対する先入観を与えうる内容となっております。ご注意下さい。

 映画館は確実に進歩している。

 その様相が顕著に表れているのは、主にシネマコンプレックス系統の映画館だ。一タイトルにつき複数の部屋の完備と全座席指定で立ち見がなくなり、ゆったりと作られた座り心地の良い座席スペースに抜群の音響、スクリーンも大きくなるなどして、非常に快適に映画を楽しむことが出来るようになっている。駐車場が広いため車で乗り付けることができ、デパート等との契約で割り引きも充実。これで文句を言うのは贅沢というものだろう。

 しかしただ一つだけ、不満というか、昔の映画館の方が良かったと思える点がある。これはおそらく多くの観客には関係のない事柄であり、映画館にとっては不利益にしかならないために排除されて当然のものではあったのだが――それ即ち、『一旦入ると何度でも見れた』という点である。

 子供のくせにB級や難解な映画を好んだ私は、一度見ただけでは内容を把握しきれない映画を観ると、それを見終わっても席を立たず、次回放映の客に紛れてもう一度始めから観たものである。完全入れ替え制の現在では不可能な業だ(と言うか、犯罪? でもみんなやってたし。パトレイバー2など、映画が終わって館内を見回すと半数くらいの客が席を立たなかったりして、おいおいこれみんなオタクかよと思いながらしっかり2回半観た)。

 とまあ、前置きが長くなってしまったが、つまり上記の不満感が久々に念頭をよぎった映画こそ、この閉ざされた森だったのだ。

 内容については情報をシャットアウトしていたものの、大まかな粗筋や風評は自然と耳に入ってきていた。曰く本格ミステリ、曰く伏線張りまくり、曰く必ず騙される、曰く全てのシーンに罠がある、曰く覚悟して観ないと非常にキツい――

 そりゃ構えますって。心の準備万端覚悟完了して見に行きましたともさ。

 で……。うあああなんじゃこりゃああああ!

 キツい。確かにこれはキツい。

 ほぼ全編に渡って豪雨と強風と暗闇と雷のフラッシュによる視覚的聴覚的遮蔽が続く中での顔アップによるサスペンス。誰が誰かわからない。正に極悪。私的にはブレアウィッチ・プロジェクトの見難さを凌駕したぞ。そうかこれが罠だな。間違いない。

 もちろん、その程度でへこたれる私ではない。一つの伏線も見落とさじと、ビカビカ明滅する土砂降りの隅から隅へと視線を走らせる。キャラの把握に30分。ストーリーの組み立てに40分。よっしゃあ、犯人はお前だぁぁぁ! 何かわからんが食らえッ!

 結果。……聞かないでください。ええもう。はぁ……ぁあ?

 も、もっかい。もう一度見せてください。ちょっと色々疑問が。

 ええと、あれがこうだから、これがああなわけで……

 うわあ、もっかい見せろ! 何で今日が最終日なんだぁぁ!

 はい、DVD買うことにします。くっそぅ。


 P.S. パンフに有栖川有栖と貫井徳郎の名が…… to top


impression home