Ankokukan No Satsuzin


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暗黒館の殺人の謎に対する私の予想


※以下は全て、上巻を読み終えた段階で得られた情報に基づきます。また、引用部分の( )内のページ数は全て上巻のものです。

作品全体を包むトリック
「第1部と2部以降では、時代が違う。具体的にいえば、2部以降は過去、おそらく30年以上前の暗黒館が舞台となっている」

 今年の六月、たくさんの死傷者を出したあの大噴火。現在もなお活発な活動を続けているあの火の山で、ひょっとしたらまた大規模な爆発が発生したのかもしれない。(P.74)

 下り坂が一段落し、さらにいくらか進んだところで、少年は異状に気づいた。タイヤの跡がいきなり大きく左手に逸れ、そのまま道の外に飛び出すようにして途切れているのだ。(P.165)

 ……そう。暗黒館と呼ばれるこの浦登家の屋敷をめざして、僕は長い山道を車に揺られてきたのだ(P.402)

 「悪巧み」という言葉が、当然ながら私の心には引っかかった。いったいどんな「悪巧み」を、首藤夫妻はしようとしていたのか。(P.525)

 「河南」――みずからの手で書いた、これが僕の名だ。(中略)
 これが自分の苗字であることは間違いない。(P.241)

 河南は目を開け、スケッチブックの一頁に並べて置いた例の懐中時計を見やる。知っている、これは僕の持ち物だ(P.242)

「彼は、中村という男でしたが」(P.218)

 建築家中村某の手に成る時島の洋館について、征順は説明を続ける。(P.504)

「もう死んでしまった男ですよ、彼は」(P.218)


殺人事件の犯人は誰か
「おそらく、遠藤富重」
 <蛭山丈男殺害事件>
 <浦登望和殺害事件>

「――妙だな」
 呟く玄児の声が間近で聞こえ、私は室内に目を戻した。
「ここには確か……」
「どうかしたのですか」
 玄児は暖炉の前に立ち、難しい顔で顎の先を撫でまわしている。
(中略)
そうして今度はその場に屈み込み、取り上げた懐中電灯を点けると、暖炉の台座に片手を突いて炉室の中を覗き込みはじめるのだった。(P.638)


犯行動機は何か
「被害者たちを苦しみから救うため――即ち善意(?)」
 <蛭山丈男殺害の動機>

 きっともう、あの人の命は風前の灯火なのだ。それであんなに苦しんでいる。それであんなにも苦しんでいるのだ。
 やがて発作の治まった怪我人の目が、うっすらと開かれたような気がした。その弱々しい視線と自分の視線とが、一瞬合ったような気もした。すでに蘇ってきていた記憶の断片――病状に伏した彼女の顔が、表情が、嫌でもそこに重なって見えた。(P.404)

 <浦登望和殺害の動機>

「死ねないのさ、困ったことに。いくら死にたいと願っても彼女は死ねない」(P.481)

そこで河南は、彼女が望和という名前であることを知った。望和は玄児らに対しても、今しがた河南を相手にそうしたのとほとんど同じような訴えを繰り返し、そのうちやっと舞踏室を去っていった。その後の玄児たち二人の会話も、別に盗み聞きをしようと意図したわけでもなしに、おのずと耳に入ってきた。(P.595)

中也とは誰なのか
「神代舜之介」


 以上です。長々とお付き合いありがとうございました。
 下巻を読んでいない以上、そこに上の推理と致命的な事実が出てくる可能性は十二分にありますが、現段階ではまあまあ纏まっているのではないでしょうか。
 あ、ちなみに過去の玄遙殺害事件については、情報が少なすぎて判断不能です。これに富重が関わっている可能性はなさそうですしねぇ。
 しかし、この推理が正解だとちょっと簡単すぎる&軽すぎるんですよね。これらは全部、作者の巧妙なミスリーディングであるという可能性もあながち有り得ないわけではないしなぁ。
 まあ、大外れだったら存分に笑って下さい。

 さあ、下巻に突入だ。


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