019天城征丸『金田一少年の事件簿 邪宗館殺人事件』(講談社)
★★★☆☆
コミックから小説へ――道のりは険しいかも。
原作のコミック版はめでたく終了を迎えたが、小説版はまだまだ続きそうな雰囲気。コミック版のトリックメーカー&著者の天城氏も、コミックと小説の両方に気を遣わなくて済むようになって、さぞかし喜んでいることだろう(え、またマガジン誌上で同じペアによる推理漫画が始まる? へえー)。
もちろんその分は小説にエネルギーを注いで、きっと傑作ができているに違いない、と踏んで読んでみると……むう。
質は決して悪くないと思う。タイトルから、まさか吉村達也か(邪宗門の惨劇)と思い心配していたが(何の心配かって? もちろん占星……ゴフゴフ)、まあその辺は流石に大丈夫だった。登場人物の細かな心理描写にも気を配っていて良い。
しかし、トリックが小ネタ過ぎるのが大問題。途中に出てくるあるトリックは出た瞬間に答えがわかるし、犯人当てやミスリードも既出の、しかも金田一少年の過去の小説版そのものから持って来られたようなネタ。私としては、金田一だからこそのバカミス的大トリックを期待しているのに……
「コミックのノベライズ」という逃げの肩書きは、この作品においてはもはや通用しない。ストーリーラインはしっかりしているんだから、あとはもう、小説ならではの、新本格読みもかくやというミステリを構築して欲しい。
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020北村薫『冬のオペラ』(中央公論社)
★★★☆☆
021小野不由美『黒祠の島』(祥伝社)
★★★★☆
大河ファンタジーの巨匠が書いたオーソドックスなミステリは、一味違う。
失踪した友人、葛木志保の行方を追って、夜叉島の異名を持つ孤島に乗り込んだ式部剛。彼女の足取りを追ううちに、得体の知れない島民たちの因習を垣間見ることになり……
『屍鬼』で大評判を得た作者の、待望のミステリ新作。
オーソドックスな孤島ものを下敷きにし、『幻の女』的サスペンス、民俗・宗教学的ペダントリー、スマートなフーダニット、罪における罰の哲学的命題と、盛り沢山の内容ながら、表面上の物語は、過去の事件を後追いする形で、あくまで静かに、端正な筆致で描かれる。さすがは大御所といった感じ。少々詰め込みすぎの嫌いもあるが、ケレン味のない文体のお陰で、するすると読まされてしまう。
ただ、物語ではなくミステリ小説として読んだ場合、不満点が幾つか。まず、主人公側や島民の手の内を明かし過ぎているために、肝心の謎解き部分で大きなサプライズに結びつかないという部分。物語的には徐々に謎が解かれていく方が盛り上がるのかもしれないが、ミステリ読みとしては、引っ張って最後にどばっと謎が解かれた方が爽快感があると思えてしまう(だから、ミステリはストーリー性がないと言われるのだろうが)。
また、前半のサスペンスが後半では薄れてしまい、根幹である推理の検討部分が中だるみのようになってしまっている。中盤あたりから、主人公が島の中である程度安定した居場所を手に入れ、「敵陣の中にいる」感がなくなってきたあたりで怒濤のような推理場面に移るので、そう感じるのだろう。もう少し、一触即発の状態でなおかつ推理(調査)、というシーンを描けば良かったと思う。難しいけど。
無論、この作者は元々ミステリ畑の人ではないし、物語として非常に楽しめたことは確か。今後の作品には素直に期待が持てる。
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022コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』(ハヤカワ)
★★★☆☆
「君はこういうことに気がついているかい。
僕のような傾向をもつ男には、何を見ても自分の専門にむすびつけて
考えないじゃいられないという精神的苦痛のあることを?
君はこうした農家の点々としている景色を見て、美しいと感嘆している。
だが僕にとっては、こういう景色を見ておこる感じは、
家のちりぢりにはなれていることと、
したがって人知れず罪悪が行われるだろうということだけなんだ」(P.359)
言わずと知れた有名探偵、シャーロック・ホームズの活躍を綴る短編集。流石にその世界観や舞台設定には大時代なものを感じるが、話運びや論理展開そのものには古臭さはなく、今でも十分に通用すると思う。多少こじつけめいているとはいえ、ホームズの快刀乱麻を断つ推理には素直に感心した。
ワトスン博士から見たホームズの人物描写は魅力に溢れていて、シャーロキアンが多いのも納得といったところ。特に、事件の進行を推理で先回りしてしまい、行動に出るまでの空いた時間に、優雅にオペラ鑑賞やバイオリン演奏を楽しめてしまう余裕があるホームズ、最高。
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023小泉迦十『火蛾』(講談社)
★★★☆☆
024井上夢人『風が吹いたら桶屋が儲かる』(集英社)
★★★☆☆
025秋月涼介『月長石の魔犬』(講談社)
★★☆☆☆
「――いや、殺人鬼なんて、意外と仮面を被って、身近に居るものよ――
他人には判らない第二、第三の穏やかな仮面を被ってね」(P.224)
第20回メフィスト賞受賞作。
都内で頻発する連続猟奇殺人事件(複数の連続猟奇殺人事件が頻発しているのだ)は、皆奇妙な終わりを遂げる。それぞれの猟奇殺人事件の犯人とおぼしき人物が、自らの殺害方法・死体装飾方法で最後の死体となって発見されるのだ。しかも、その猟奇殺人事件犯人の死体には皆、左手首がなかった! 猟奇殺人犯を猟奇的に殺害する猟奇殺人犯がいるのか。謎が深まる中、新たなる猟奇殺人が発生した。
とまあ、シチュエーションはごちゃごちゃしていて非常にメフィスト賞好みというか、魅力的といえなくもないというか。登場人物も、推理力の冴える石工の風桜青紫、青紫に惚れ込み、弟子入りして彼の気を引こうとする大学生の鴇冬静流、ミステリ好きで殺人事件を解決したくて堪らない警視の鴻薙冴葉、猟奇殺人犯を狙う殺人者「先生」に殺されたいと切実に願う欲望欠如症の霧嶋悠璃、とこれもメフィスト賞らしく、ある特定層の受けを狙ったようなキャラクタ設定&配置。同キャラを使った続編を最初から考慮に入れた書き方ですな。
だとすると、今回は軽いジャブといった感じなのか。何せ、トリックらしいトリックも、ロジックらしいロジックもない。ミステリではなく、殺人事件を触媒とする人物ドラマのような雰囲気なのだ。もう少しこのミステリ部分がしっかりしていれば、お勧めできる作品になる筈なんだけどねえ。
まあ、今回はイマイチってことで。次作が良ければ挽回できるかも。
あと、
西洋料理店、
洋菓子(、
情緒(、
首飾り(、など、やたらと強引な当て字を使うのが鼻についた。同人じゃないんだから。
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026黒田研二『硝子細工のマトリョーシカ』(講談社)
★★★★☆
「君、本当にすごいと思うよ。アイドルおたくにしておくのはもったいない」
「違いますよ」
安堂は顎の肉を何度も引っ張りながら答えた。
「これだけの才能があるから、プロのおたくを堂々とやっていられるんです」(P.349)
メフィスト賞デビューの黒田氏、早くも三作目。ペース早いなぁ。
ううむ。タイトルからも想像が付くとおり、入れ子構造の話なのだが、こう来たか。微妙微妙。でもまあ、すごくがんばってる、といえるのではないだろうか(何様?)。文章力も格段にアップしているし、少なくとも前2作よりは受けがいいのではないかと。
ただこういった構造の話では、表か裏か、といった二者択一的な解答になりがちで、それを決定する論理は数あれど、どうしてもサプライズが想像の域を出ないことが多く(デビッド・フィンチャー「ゲーム」しかり)、事実この作品もその点で評価が下がってしまう。まあ、これはある意味構造的欠陥といえるものなので、仕方がないといえば仕方がないのだが、その構造すらも脱してくれれば、手放しで褒められたかと思うと残念。少なくとも私はそれを期待して読んだのだ(それくらい、この作者には期待している)。
とにかく、狭義のミステリ好きの私としては、真摯に本格スタイルを貫き続ける黒田氏はとても貴重な存在。これからもがんばって欲しい。
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027歌野晶午『放浪探偵と七つの殺人』(講談社)
★★★☆☆
028柄刀一『殺意は砂糖の右側に』(祥伝社)
★★★☆☆
まあ確かに、食事をするというのは
化学反応を利用してエネルギーを得るという代謝活動なのだろうし、
旨味というのも物理的な成分ではあるのだろうけれど、それにしてもやっぱり、
うちの台所で初めて龍之介があの瓶を取り出したのを見た時には胆をつぶした。
毒殺されるのかと思った。(P.40)
知能指数と博識は高いが、生活能力は低い(?)、龍之介が故郷の島を離れ、東京にやってきた。連作短編集。
ぶっちゃけて言えば、ちょっと前に流行った科学マジックをミステリ風にアレンジしたという感じ。一見すると不思議に思える科学・物理現象を使ったトリックを龍之介がいとも簡単に解き明かしていくというのは、まんがサイエンス(あさりよしとお)を読んでいるみたいでけっこう楽しい。
ただ、そこに頼りきっているせいで、ただの知識問題に見える、というのももっともなところ。でも、多かれ少なかれミステリなんてそんなものだし、この路線で統一するということに対して問題はないと思う。
お気に入りは毒殺トリックに新境地を見出した表題作と、パズル要素がきれいに決まった『エデンは月の裏側に』。シリーズの今後にも期待の一冊。
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029高田崇史『試験に出るパズル』(講談社)
★★☆☆☆
お正月を機会に新しく定期預金をつくることにした。
広告ではA銀行は、「3万円を3年預けると3千円の利息が付きます」といい、
B銀行は、「4万円を4年預けると4千円の利息が付きます」という……。
どっちの金利が高いか?
(芦ヶ原伸之『パズル天国と地獄』より)
論理クイズやパズルは非常に好きである。ミステリも半分(以上)はそういったロジカルな楽しみを求めて読んでいるわけで、こういうタイトルの本を出されると弱いのだ。しかも作者が大御所、あの歴史新本格QEDの高田氏と来れば(いや、実は読んでいないんだけどQED)、嫌が応にも期待に胸が膨らむというもの。
で、喜び勇んで読み始めたんだけれど……ううむ。
はっきり言って、温い。温すぎ。
いや、別にキャラクター受けを狙ったものがいけないとか、殺人ばりばりの硬派な展開じゃなくては駄目、と言っているわけじゃない。ただ「パズル」のキーワードを前面に押し出している以上、最低限、隙のないロジック重視で行って貰わないと何だか肩透かしを食らった気分になる。
全体的に、「問題編」にも「解答編」にも捻りが足りないし、穴も多い。「だれがカレーを焦がしたか」など、シチュエーションが面白いだけに、もう少し料理の仕方があったのではないかと思う。作中で千波の出すパズル問題の方がよっぽど面白かったというのが本音。
あと、「〜だよ」「〜だね」等の、やたら馴れ馴れしい語り口調は何とかならなかったんだろうか。読んでいて少々苛立つ。
とまあ、評価が辛口なのは、やっぱり最初の期待が大きすぎたせいで。続編があるなら、今度こそ解き甲斐のあるパズルをお願い。
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030菅浩江『鬼女の都』(祥伝社)
★★★★☆
源氏の正妻である葵の上に嫉妬した六条御息所は、生霊となって
葵の上を苦しめた。そこで六条御息所を追い払うために聖が読経すると、
「あらあら恐ろしの般若声や。これまでぞ怨霊この後又も来るまじ」と、
読経の声が鬼のように恐ろしく聞こえたといって退散してしまう。
これは謡曲『葵の上』のクライマックスにあたる部分だが、この話から
いつしか六条御息所が着けている鬼面を般若とよぶようになったのだという。
(村上健司『妖怪事典』(毎日新聞社)項目「般若」より)
優れた京都ものの同人小説作家であると同時に生粋の京女である藤原花奈女が、華やかな小袖が散乱する部屋で自殺死体となって発見された。彼女は自らの生み出した架空の人格である筈の「京都の随」ミヤコに出版社デビュー作を酷評され、絶望していたという。果たしてミヤコは実在するのか。同じ同人作家として花奈女を尊敬していた吉田優希は告別式のために訪れた京都でミヤコの影を追ううちに、怪事件に巻き込まれる。
京都が魔境であるということをひしひしと感じさせられる1冊。目次が能「葵上」の演目になぞらえてあるのも面白い。キャラ造形がステロタイプなため最初はやや引いたものの、滑らかな文体で、中盤からぐいぐい引き込まれる。京都や能に対する蘊蓄の部分もさほど難解ではなく、リーダビリティは高い。
ただ、後半のもたついた展開で、肝心の真相がネタの割りにちょっと勿体ぶりすぎな印象を与えてしまっているのが残念。まあ三味線探偵(笑)はなかなか面白かったし、京都好きなのでプラス点。
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031ピーター・ラヴゼイ『偽のデュー警部』(ハヤカワ)
★★★☆☆
032西澤保彦『夏の夜会』(光文社)
★★★★☆
「そりゃあなんだな………………気のせいってヤツなんじゃねえの?
おれなんかも昔のコトを思い出せば
ひとりやふたり殺したような気がしないコトもないし
……なんか山の中で一生懸命穴を掘ったような記憶もあるし……
親友だった筈なんだけど
ある時期からのそいつの記憶がまるでないってコトもあるし……」
(たがみよしひさ『なあばすぶれいくだうん』Report.31より)
同級生の結婚式のため帰省した主人公たちの間で語られる、小学校時代に起きた殺人事件の思い出話。曖昧な記憶に埋没した情報を繋ぎ合わせていくと……?
綾辻行人なんかも得意な、記憶の曖昧さをテーマにしたミステリ。夏の夜の熱気に浮かされたような怪しげな雰囲気の中で、酒と共に自らの脳と格闘しているうちに、どんどん世界が歪んでいく。
この話の中では記憶こそが謎であり、トリックであり、容疑者であり、目撃者であり、そしてやっぱり証拠でもある。ジャーロ誌に連載された形のためでもあるけれど、1つの章が終わるごとに小さな波が押し寄せてきて、記憶がくるりと立場を変える、その描写は秀逸。
……でも、ひとつだけ苦言。登場人物の名前が相変わらず読みにくいのは何とかならないものだろうか。
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033森博嗣『今夜はパラシュート博物館へ』(講談社)
★★★☆☆
たとえば、信号を赤か青のどちらか一つのライトだけにする必要があれば、
工学者は間違いなく青いライトを選ぶだろう。
何故なら、万が一、電球が切れたときに、「停止」の意味になるからだ。(P.16)
もはや紹介するまでもない第1回メフィスト賞受賞作家、森博嗣の3冊目の短編集。小説現代増刊「メフィスト」に掲載されたものに、書き下ろしを加えた全8本。一言ずつぼやく。
どちらかが魔女:恒例の黒窓の会シリーズ。フレスコ画の釘痕は学校で習った。やっぱり諏訪野が主役。
双頭の鷲の旗の下に:ツイストがいい感じ。ミスリードも。悔しい。
ぶるぶる人形にうってつけの夜:街頭でやってたよ、これ。500円もするんでやんの。(←買ったのか!)
ゲームの国:何が起こっているのか、さっぱり。
私の崖はこの夏のアウトライン:ま、色々想像は可能。けっこう好き。
卒業文集:素直に面白かった。
恋之坂ナイトグライド:天使とダブらせるのは、在り来たりなのか、斬新なのか。
素敵な模型屋さん:素敵なお話、かな。ジャンルは違えど、誰もが共感できるよね。発想はすごくマイナーなんだけど。
ミステリとしての評価は低いんだけど、全体的に安定している。彼の短編集では初めて、ラストの短編が面白かった。
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034ジル・マゴーン『騙し絵の檻』(創元推理文庫)
★★★★☆
運転しながら、耳の中で判事の言葉が鳴り響いた。
十五年。十五年と裁判前の勾留数ヶ月の間、ホルトは監禁された。
しかし今、彼は外に出た。外に出て、彼は戻ってきた。
そして、危険なものになっていた。(P.26)
法月綸太郎が解説でベタ褒めしている、とネットの前評判が良かったので読んでみたら大当たり。
現在10作以上の著書を持つ筆者の第4作目であり、和訳されたのも4作目。なんと13年前の作品だったりするが、構成の巧さで古さを感じさせない。
ストーリーは至って単純。従兄弟と探偵を殺したという冤罪を被り、何もかもを失って15年間服役した主人公が以前暮らしていた街に戻ってくる。彼の目的は、自分を陥れた犯人を自らの手で見つけだし、その息の根を止めることだった、というもの。
解説にも書かれているが、主人公は復讐心のあまり冷酷非情な推理マシーンと化しており、誰も信用せず、ただ淡々と容疑者たちを問い詰めていく様が鬼気迫っている。
限られた容疑者、二転三転する犯人像、次第に明かされる驚愕の事実、と本格好きの血を沸き立たせる展開が目白押しで、しかも最後の最後に主人公が容疑者を一堂に集め、さてというばかりに推理ショーを披露し始めるというサービスぶり。こんなストレートなミステリは久しぶりに読んだ気がする。
ただ、そのミステリコード部分以外にドラマ性はほぼ皆無。主人公は暗いし、全体的に一本調子なので、中盤あたりを越すのが難関かもしれない。ヒロインの存在が救いといえば救いかも。
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035恩田陸『puzzle』(祥伝社)
★★★☆☆
036森博嗣『恋恋連歩の演習』(講談社)
★★★☆☆
「何か、考えていたでしょう?」
「自由の女神のことを」
「へえ……」男は口を窄める。「彼女、サンダルを履いていますよね」(P.25)
瀬在丸シリーズ第6弾。
話には聞いていたが、本当にそのまんま『偽のデュー警部』だった。『森博嗣のミステリィ工作室』でもベストに挙がっていたし、相当お気に入りだった模様。
やっぱりこの作者のルーツって、少女漫画チックな男女(とは限らないが)の出会い描写にあるんだろうな。そこが如何に洗練されているかが重要。その後の本編(事件)なんて付け足しみたいなものでもよし、という。そこにオマージュが加わり、こんな導入設定完成型の物語になった。
そのこと自体はいい。話の内容も、確かにそそられるシチュエーションが満載だ。しかし、これはミステリなのだ。もちろん殺人事件の謎だろうが犬猫探しだろうが、ミステリにはなり得る。今回のメインは
隠し場所だと判断したのに……いくらなんでも、あの
隠し場所だけはいただけないと思う。だって
ばれるでしょう、どう考えても。
といったわけで、少々不満が残った。
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037森博嗣『六人の超音波科学者』(講談社)
★★☆☆☆
「お聞きしたいわ。でも、ハードの進展をあと十年は待たないと、
今のお話の決着を見ることはできない、という私の個人的意見を
少しだけ申し上げておきます。こんな、何でしたかしら?」(P.78)
瀬在丸シリーズ第7弾。
今回もいまいちかな。論理はまあ、洗練されているとは思うけれど、いかんせん小ネタ過ぎるような。短編用のアイデアを無理矢理引き延ばした感じがした。せっかくのクローズド・サークルものなんだし、『夢・出会い・魔性』くらいのアクロバティックな論理が展開されて欲しかった。
キャラクタ的にも今回は弱い。殆どが同じ科学者だから余計にそう感じるのかもしれないが、突っ込んだ人物描写も会話シーンも充実しておらず、事件が起こっても、そのうちの誰かを疑うことすら困難。結局、思考停止状態で読み進んでいた。
メインキャラたちも、最近は痴話喧嘩しているだけのような感じに……
進展させるならさっさとさせてしまえばいいのに(ま、させる気ないんだろうけど)。
もう少し何とかして欲しい。いろんな意味で。
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