M for Murder & Mackerel.


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ダイイング・メッセージの別解


【芯】
@とうしんぐさ(灯心草)。イグサ科の多年草。油に浸して灯火のしんに用いる。
Aしん。物の中心。

(P.120〜)
「でもな、どう見ても、なにも浮かばんしな。こうかな」
 加藤刑事はメモをさかさまにしてみた。そして再び元に戻す。
「もっとわからなくなった」
「あの……」
 樫村青年はそっといった。
「今のをもう一度、やってもらえますか? なにかがもやもやっと頭にきたんです」


Aしん。物の中心 → 中心 →  → 忠


「あれ? あれあれ……」
 樫村青年はメモをじっと見つめた。そして不意に立ち上がると机の上の漢和辞典を取り上げた。
「刑事さん、容疑者について手帳にすべて書き込んであるんですよね?」
「ああ、黒妖斎が穴で見つかったときから、すべてこれにメモしてある」
 加藤刑事は背広の内ポケットから手帳を出す。
「ちょっとそれを見せてください。ああ、ここか」



「あれ? おかしいな。正解だと思ったのに」
 しばらく考えていた青年は小首を傾げると漢和辞典の冒頭へとページを繰った。


【忠】
@まこと(誠)。まごころ。
Aまことをつくす。
B君主や国家に仕える道。主君にまごころをつくす。
Cまめやか。まじめ。

「ははあ、そうか。やっぱり僕は漢字が苦手だから、わからなかったんだな。そうか、ふふん」



 というわけで、犯人は青妖斎こと倉本誠に違いない。
 もちろん第二の事件は自殺。外側からも紐で縛ったのは、犯人が外側に逃げたように思わせる、つまり結果的に他殺に見せかけるため。

 ……ううむ、完璧だと思ったんだがなぁ。あまりにも条件に合いすぎるから、ひょっとしてミスリードかとも思ったけど。どうなんだろう。

参考文献:福武漢和辞典(ベネッセ)


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