ゲームブックに「指セーブ」という最強のメタ的記録手段が備わっているように、コンピュータRPGには複数の「冒険の書」や「旅日記」が存在し、道を誤ったり旅に疲れた冒険者たちをいつでも過去の世界にいざなってくれます。
今から始まるのはそんな物語。これから30分、あなたの目はあなたの体を離れ、この不思議な時間の中に入って行くのです。
――さあ桃太郎、ゆっくりと目をお開けなさい。あなたには何が見えますか。
見えるのは……山肌にぽっかりと開いた穴。洞窟――いや、炭坑?
――いいえ、これは金鉱の入り口。ここは足柄山の洞窟です。
足柄山……というと、金太郎の……
――そう、あなたが華麗にスルーした金太郎の村です。あなたは鬼たちに暴虐され困却した村人たちの救いを求める目を振り切って竜宮城にバカンスに行きましたね。
いや……それは攻略上の問題で……第一竜宮城じゃちっともバカンスなんて……
――御仏はすべてをご覧になっています。
いやほんと、いろいろ未遂に終わっちゃったんですって。だいたい金太郎の村もあとからちゃんと回ろうかなって思っていたんですよ。マジですよ。
――御仏はすべてをご覧になっています。
だってあれ必須イベントだし。ちょっと敵が強いとか装備を整えたいとかプレイがマンネリとかまあそういうのっぴきならない理由があって……その……
――とにかく桃太郎、あなたに罪滅ぼしのチャンスを差し上げましょう。さあ、この穴から中へお入りなさい。
は、はあ。入ればいいんですね。
――そうです。ずずいと。
ず、ずずいと。入りましたぁー。
獄卒が襲ってきた。
「死ねや桃太郎! 天誅ー!」
えええええええええええええええええ!!
ちょ、いきなりってアホかー!
ドムン!
はい。というわけでみなさんコンチハ。久しぶりの来日デス。今回は平行セーブしてあった以前のデータを使って、金太郎の村を攻略してみたいと思いマース。
なんせ今や桃太郎は10段越え、装備も良くなって以前とは見違えるほど強くなりました。このまま素直に金太郎の村を攻略してもつまらないので、
もし浦島の村に行く前に足柄山の洞窟に行っていたら、というのを試してみましょう。
そんなわけで、桃太郎一行のステータスは以下の通りです。
| 段 | 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
桃太郎 | 8 | 64 | 19 |
80 | 64 |
27 | 1259 |
装備 |
瓦割りの刀(攻32) 竹の胴(守15) はちまき(守3) キツネの足袋(守8)
|
かくれみの×3 仙人のかすみ×2 きびだんご×2 竹の水筒
|
| 段 | 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
銀次 | 6 | 50 | 0 |
25 | 39 |
24 | 409 |
装備 |
*** 小そで着流し(守11) はちまき(守3) キツネの足袋(守8)
|
きびだんご×6 仙人のかすみ 竹の水筒
|
桃太郎は11段→8段に逆戻り。銀次は金太郎の村の茶店で仲間になったばかりで6段。一応すずめのお宿2まで行って竹の胴を揃え、各種仙人と戦って鹿角の術までは覚えています。というか鹿角がないと足柄山のボスには
到底太刀打ちできません。
道具については、洞窟内をスムーズに歩くための
「かくれみの」と技回復用の
「仙人のかすみ」、あとなくてはならない「きびだんご」。今回は
「元気の玉」は使いません。その理由は後ほど。
さて、侵入して早々に獄卒に襲われた桃太郎ですが、その運命や如何に――
| 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
獄卒 | 68 | 60 |
78 | 40 |
55 | 90 |
特技 |
力ため
|
|
迫り来るだんびらの刃!
「危ない、桃太郎さん!」
と、桃太郎の前に身を乗り出したのは、なんと銀次。
ザシュッ!
銀次! 馬鹿な!
スローモーションで倒れ伏す銀次。
銀次ーっ!
銀次に駆け寄る桃太郎。
「
へ…へへへ。忘れてたぜ。いつも桃太郎さんと行動しているから、自分も死なないなんて思ってたら…俺はただのスリなんだ」
大丈夫だ。傷は浅いぞ銀次!
「
最後にひとこといわせてくれ…桃太郎…あんたはいい奴だ。だから攻略のルールを守って……金太郎の村を救ってくれ……」
ク…
……銀次……
「うへへへへ……次は貴様だぜ桃太郎!」
それは……こっちの台詞だ!
ろっかくーん!
桃太郎の剣が鋭さを増し、獄卒は一瞬で消し炭になります。
獄卒の出番は以上。
銀次……わかったぜ。お前の遺志は継ぐ。必ずや金太郎の村に平和を取り戻してみせる!
桃太郎は孤独に誓うのだった。
とまあ、のっぴきならない理由によりこの洞窟は桃太郎一人で攻略です。実は単に銀次に経験値を与えたくないだけなんですけれど、ちょっとドラマチックに演出してみました。桃太郎のモチベーションも上がって良かった。
銀次死んでも、どうせパラレルワールドだしね。(すべて台無し)
そんなわけで、今回銀次は
ただの道具袋としての機能しかないため、全体回復アイテムである
「元気の玉」は必要ないんです。
で、入り口に陣取っていた獄卒を屠った桃太郎は金鉱山の中へと侵入します。鉱山の中には採掘のためのリフトや水道が至るところにあり、村人はそこで鬼たちに働かされています。どうやら鬼の目的はここで取れる金にあるようです。聞くところによると、子供たちを人質に取られて逆らうことができないんだとか。くっ……なんて外道な奴らだ。桃太郎はリフトを駆使して洞窟の奥へと進んでいきます。
村人を監視する鬼たちは、竜宮城のときのように
話しかけると襲ってくるので、涙を飲んで無視です。また、途中にいくつかの小部屋があり、沢山のつづらが置かれていますが、やはり監視の鬼がいるのでスルー。雑魚と闘えないという縛りはこういうとき辛いですね。
ただ、地下へ降りるリフトの先、だだっ広い空間の一番西にあるトンネル奥、崖っぷちのつづらだけは監視がいないので取っておきます。ここにあるのは銀次専用の武器「柳刃包丁」。彼の墓へ入れるいい手向けになるぜ!(既に埋葬覚悟)
なおも奥へと進むと、立て続けに4体の獄卒とバトルになります。この戦闘はどうやっても避けられないんですよね。まあ
もう獄卒の出番は終わったのでさらりと流しますが。
桃太郎の現在の心が1259。次の段へ上がるのに必要な心が1350で、獄卒1体の心が90なので、入り口の獄卒を含めて2体目を倒した時点で桃太郎は9段に上がります。よって
ここのボスを8段で攻略するのは無理なんですね(今回のプレイでは)。
で、獄卒たちを倒してトンネルを抜けた先にいたのは金太郎。なにやら巨大な岩の塊を一人で支えて踏ん張っています。よく見ると彼の周りには
檻に入れられた子供たちの姿が。このまま金太郎が潰れれば、子供たちもろとも岩の下敷きという状況のようです。
どうやら桃太郎が仙人庵巡りをしている間中ずっと、
彼はここで大岩を支えていたようです。見上げた根性だ金太郎! でも俺って力ないし、何も助けてやれることはないなぁ。
あ、そうか、子供たちを檻から出して岩の下から移動させればいいんだ。名案を閃いた桃太郎、まずはその作戦を伝えに金太郎の元へ。
すると金太郎、「桃太郎が来てくれりゃ百人力だ!」と叫んで大岩を遥か彼方まで放り投げてしまいます。凄まじい自己暗示の力だ! てか、
だったら最初からそうしろよとかも思いますが桃太郎は友達思いなのでただ親指を立てて「グッジョブ!」と言いました。結果良ければすべて良し。これで金太郎が仲間に入りました。
とそこへ現れるカルラ様。鬼族であるカルラ様は「友情・努力・勝利」みたいなものが大嫌いのようで、桃太郎の加勢でパワーアップした金太郎を見て苦虫を噛み潰したような顔をしています。おや、今回は彼の隣りに見覚えのある奴がいますよ。
そいつの名はダイダ王子。何を隠そう、物語の最初で月の御殿に攻め入ってきて、最強レベルの桃太郎を一蹴、月から地球まで吹っ飛ばした張本人です。いわば今回の宿敵。桃太郎の旅は彼に立ち向かうために始まったようなものなのです。
「俺の攻撃をくらってまだ生きていたとは天晴れ。
じゃあ俺と闘え!」
と、王子はバトルジャンキーそのものの台詞を放って襲いかかってきました。
| 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
ダイダ王子 | 4000 | 0 |
272 | 378 |
128 | 57000 |
| 段 | 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
桃太郎 | 9 | 67 | 24 |
84 | 68 |
28 | 1409 |
装備 |
瓦割りの刀(攻32) 竹の胴(守15) はちまき(守3) キツネの足袋(守8)
|
仙人のかすみ×2 きびだんご×5
|
勝てるはずがありません。
大体、45段の桃太郎が一捻りだったというのに9段ぽっちで敵う相手じゃないってのは見りゃわかるでしょうに。
と、早くも逃げ腰の桃太郎をダイダ王子の一撃が襲う!
「桃太郎ーッ! 危ねえッ!」
ズバン ガオーン!!
……あれ、デジャ・ヴュ?
って。
金太郎ー!
1段で防具すら着けていない金太郎が桃太郎の前に身を乗り出したのです!
シューシュー
「金太郎は……こなみじんになって死んだ」
うそだ……金太郎を……殺したなどと……ウソをつくなあああああーッ!
「なに……? 桃太郎の斬撃がこんなに遠くまで攻撃できるなどと……聞いていなかったぞ……」
このドグサレがァァーッ!!
ズドバババ!
「ふん。だが素早さが足りん。そしてまず味方を庇おうと思っているその精神が気に食わん。面白くない! カルラ! 俺は帰るぞ!」
と、空中に消えるダイダ王子。
野郎ッ! 待ちやがれーッ!
すっかり言葉使いが乱暴になった桃太郎。
「おっと、お前の相手はこっちだ!
ものども、かかれ!」
カルラ様の号令で雑魚鬼たちが束になって襲いかかってきます。内訳は、
赤鬼×4
青鬼×4
雷鬼×2、馬鬼×2
獄卒、赤鬼×2、青鬼×2
前2つは余裕。手こずるのは雷鬼と馬鬼のペアぐらいのものですね。両者とも20P超のダメージを食らわせてくる技を持っています。比較的危険な馬鬼から倒せばまあなんとかなるでしょう。
獄卒率いる第4戦では、何よりも戦闘終了直前に桃太郎の
体力と技がほぼ全快になるようにアイテムで調整するのが大事。本番はこのあとですからね。
それから、第2戦、4戦で青鬼から毒を受けている場合、ちゃんと「毒消し」を使って治しておきます。「毒消し」は青鬼が高確率で落としてくれるので、わざわざ持って来なくても大丈夫。もし第2戦で手に入らなければどくけしの術を使いましょう。毒は、毎ターンダメージを受ける猛毒と違って移動中のダメージのみなので放置しても直接不利になるわけではありませんが、お供のキジが肝心な場面でどくけしの術を唱え、回復がままならなくなる危険性を回避するためです。
そう、次ボス戦の要はキジのサポート。勝つも負けるもキジ次第。
スーファミのAIにどれだけ命を預けられるかがキーポイントとなってくるのです。
「おやおや! ダイダ王子が嘆くほど弱くはないようだな!」
カルラ様は雑魚鬼を撃退した桃太郎を睨め付けると、強そうな鬼を呼び寄せます。その名も竜燈鬼。彼は足柄山金鉱のショバをご褒美に確約され、喜々として桃太郎に向かってきます。もちろん
回復などする時間はくれません。
BATTLE 10 竜燈鬼
| 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
竜燈鬼 | 364 | 0 |
87 | 37 |
35 | 730 |
特技 |
鬼道・吸い取り、竜攻撃
|
|
| 段 | 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
桃太郎 | 9 | 67 | 24 |
84 | 68 |
28 | 1409 |
装備 |
瓦割りの刀(攻32) 竹の胴(守15) はちまき(守3) キツネの足袋(守8)
|
仙人のかすみ きびだんご×3
|
竜燈鬼は左腕に小型の竜を巻き付けており、毎ターン
自身の攻撃と同時に竜も攻撃してくる厄介な鬼です。竜に体力は設定されていないので倒すことはできません。竜の攻撃力は竜燈鬼の約1/2なので、理論上1.5倍の打撃力ということですね。
一方こちらは銀次と金太郎を失っているので、頼みの綱はお供たちしかいません。3匹が同時に攻撃を仕掛けてくれればそこそこのダメージにはなるのですが、無論そのためには3ターン使って「きびだんご」を与えてやらねばなりません。
現在9段の桃太郎(体力67)が竜燈鬼から受けるダメージは約28P、竜のダメージが約14P、したがって毎ターン42P前後のダメージを食らうことになります。最大体力の6割強――これでは悠長に「きびだんご」食わせている暇はありません。それどころか、
桃太郎自身の回復で手一杯で、攻撃する余裕さえありません。
なので。お供に「きびだんご」を使える隙は
敵の攻撃を確実に耐え凌げる1ターン目しかありません。もちろん選択するのは回復術の使えるキジです。
以降は、しばらく桃太郎自身の体力回復に専念することになります。早さは竜燈鬼の方が勝っているのですが、
回復時の素早さ補正のお陰で大概において先制できるので、「きびだんご」を使います。
このとき、上手く「
桃太郎回復→竜燈鬼&竜攻撃→キジのサポート」の順番で行動が進み、最後にキジがきんたんを唱えてくれれば良いのですが、実はお供の早さはいまいち安定しておらず、中途半端な位置で行動ターンが回ってくることが多いです。
もし桃太郎回復の直後にキジのターンが来た場合、キジは
回復の必要性なしと判断し、攻撃したりまもりの術を使ったりします。そうなると直後の敵の攻撃で桃太郎の体力が減ってしまうので、次のターンでは再び自力で回復を図らねばなりません。
また、「きびだんご」の回復Pは30なので、ダメージの蓄積が致命的になるのを防ぐためには桃太郎のきんたん(40回復)も併用せねばならず、早いうちに上記の理想的行動パターンが成立するかどうかは運任せになってしまいます。
とにかく、ターン開始時に桃太郎の体力が42Pを越えていないことには攻勢に出られません。かといって数に限りのある「きびだんご」やきんたんで長時間耐え続けるのは不可能です。
ここが考えどころですね。箇条書きにすると、
- 桃太郎が攻撃するためには少なくとも敵の攻撃を1ターン耐えきるだけの体力がいる。
- 体力を確保するには敵の攻撃のあとに回復ターンが来なければならない。
- キジに回復してもらうには、少なくともキジのターン直前に桃太郎が瀕死状態になっていなければならない。
- 桃太郎が瀕死状態になるためには素早さ補正のある桃太郎自身が回復を行うべきではない。
- 桃太郎が回復しない場合、敵の攻撃がキジより先に来た時点で致命的ダメージ。
正直、キジの行動は気まぐれなので
信用すると痛い目に
遭います。回復の見込める状況でも無視して敵を攻撃したりします。ましてや桃太郎が瀕死状態にも関わらずサポートを期待して攻撃する、などという無茶をすれば、大抵失敗に終わるでしょう。
そうなると、果たして上手い方法はあるのか?
――もちろんあります。
「防御」です。再三の説明になりますが、新桃では防御によってすべての物理ダメージは半減されます。今回の場合だと、桃太郎が受ける総合ダメージは21前後にまで減るのです。
よって、誤差も考慮に入れ、体力が24以下の場合は回復を、25〜44の場合は防御します(もちろん45以上あれば攻勢に移ります)。体力が20台なら十分にダメージを受けていると判断されるため、高確率でキジの回復対象になります。仮にそのあと敵の攻撃が来ても、防御していればさほど減りません。体力45キープへの道が近付きます。
また、敵の特殊攻撃である
鬼道・吸い取りにも注目です。これは相手の体力を奪い取って自分の体力を回復する厄介な術ではあるのですが、その便利さへの制約として奪い取る体力は通常ダメージよりもかなり低めに設定されています(竜燈鬼が17前後、竜が5前後)。つまり、こいつが来たときが攻勢に出るチャンスと思ってOK。
なんにせよ、防御と回復を駆使して上手く桃太郎の体力が45以上になったら、迷わず鹿角を放ちましょう。ダメージは80前後なので、できるなら3発すべて打ち込みたいところですが、きんたんなどの消耗が響いて技が足りなくなっている可能性が高いので、
目標は2発です。あとはひたすら打撃で倒します。
「仙人のかすみ」で技を回復する手もあるのですが、せっかく敵にダメージを与える条件が整ったターンに攻撃しないのは勿体ないですからね。じゃあなんで用意したのかというと、これは体力回復のためです。きんたんが使えない状態では踏ん張りが利かないので、術が2以下になったら隙を見て使います。
まあキジの突っつきダメージなども蓄積されているので、攻撃さえできていれば割とあっさり倒せるでしょう。実際に蓋を開けてみると、大方の予想通り、攻撃態勢に行き着くまでにやられるパターンがほとんどです。瀕死の桃太郎を前にしたキジに
どくけしを使われた苦い経験から、大事な戦闘前には必ず毒は消しておこうという教訓を得ましたよ、ええ。
10数回のリセットを経て、ようやく桃太郎は竜燈鬼にとどめの一撃を叩き込みました。使った鹿角はやはり2発。アイテムも尽きやばいところでした。
竜燈鬼、桃太郎9段(心:1409)でクリア!
いやはや手こずりました。竜燈鬼の強さもさることながら、
洞窟の長さ(長い)、出てくる
雑魚敵の強さ(数回全滅)、
ダイダ王子の先制攻撃(ここで金太郎に庇わせないと彼が生き残る→トライ失敗)、雑魚連戦での体力・技調整(一度
馬鬼の痛恨×2+雷鬼の雷鳴をくらって死んだ)と、クリアを妨害する要素が多いのが辛かったです。しかしこれ、8段だったら倒せていたかどうかわからなかったですね。
ともかくこれで銀次と金太郎の敵は取りました。子供たちも開放され、金太郎の村にはまたにぎやかな祭が戻ってきたのです。
よーし桃太郎夜店で遊んじゃうぞー!
と、ジャリ銭片手に屋台に並んでいた桃太郎の脳裏に、聞き慣れた声が響きます。
――よくやりましたね、桃太郎。
あんたか。金太郎の村は救ったぞ。これで文句はないだろう。
――ええ。それでは約束通り、あなたを元いた世界に戻して差し上げましょう。
え、そんな約束したっけ? てか、その前にちょっと射的とかやらせてよ。花火も見たいし盆踊りも……
――えーい、飛んでけー!
うわああぁぁぁぁっ! 俺のりんごアメーっ!
空中に飛ばされていく桃太郎の周囲が暗くなり、やがて無数の星が瞬き始めます。
星――これは宇宙か?
……そうだ。思い出したぞ。俺はかぐや姫を救うため、月へ――
月へ!
次回……浦島最大の挑戦へ(続く) to top
少しの間、夢を見ていたようでした。目を開くと、そこには荒涼とした黄土色の大地が広がっています。ところどころに見えるのは、隕石が衝突した跡と思われるクレーター。
どうやら、月に着いたようです。
「
月の鬼たちは幻術を駆使してくると聞きます。油断せず行きましょう」
浦島はそう言って、慎重に歩き出します。なるほど、鬼の幻覚か。そういうこともあるのかも知れない。桃太郎はなんとなく納得しながら後を追います。
実際、この辺りに出没する鬼たちはかなりの強敵でした。『どふもこふも』は混乱を誘うかくらんの術を使ってきますし、夢を操る『獏』は今までに倒したことのあるボス敵(餓鬼やばっかんきなど)の
幻影を呼び出して襲わせます。
ちょっと気を抜くと、村までの道程ですぐに全滅してしまいます。もちろん桃太郎たちは逃げるしかないため、
「かくれみの」とぬけだしの術を上手く使って回避しつつ、月の海をぐるっと回り込むようにして静かの村へと滑り込みました。
これが、今までにないほど遠大かつ困難な綱渡りチャレンジの幕開けだったとは、神ならぬ身の桃太郎には予想し得なかったのです……
というわけで今回、読む方にも多大な根気が必要となりますので、悪しからず。ファミコンは1日1時間!
おごそかな雅楽の音色が響き渡る月の村で、桃太郎たちは早速情報収集。さすが月だけあって、辺りには沢山のウサギが跋扈しています。ウサギさんの言うことにゃ、
ここから月の宮殿には行けないようです。宮殿に行くには「月の舟」で海を渡る必要があり、それは嵐の村にしかないとのこと。デーム! なんて骨体!
まあ、仕方がありません。どのみち今の桃太郎は力不足。その上、鬼の総統である婆娑羅王を追うためには、彼に砕かれた「月の水晶」の欠片を八つ揃えて
不死鳥ラーミア鳳凰を蘇らせないといけないようです。
ああ、そんなのあったね。
水晶の欠片といえば、第1回でおむすびころりん村を開放した際に、
ネズミの長老から1つもらったきりです。世界のどこに散らばったかもわからない欠片をあと7つも探し出さねばならないわけで、これは並大抵ではないですよ。弱った弱った。
「
そこで「月の鏡」ですよ桃太郎さん」とウサギ。なんでもこの村には臥龍という龍が鎮座しており、彼の試練を受けることで月の欠片の場所がピンポイントでわかる素敵アイテム「月の鏡」が手に入るそうなのです。
ありがとう、それは良いことを聞いたよ。お礼に「きびだんご」はどうかね?
「
いりません。それ食べると強制的にお供にさせられるんでしょ。竜宮城のカメさんが言ってました」
ちっ。
ウサギのくせにカメと通じやがって!
まあとにかく、村で装備を整えた桃太郎一行は臥龍に会いに行きます。
と、
地下へ続く通路の前に立つ女性が。どうやら臥龍に会えるのは1人だけ、しかも試練の内容は彼との力比べ、
早い話がバトルってことのようです。
さて、これは弱りました。なにせ低経験値クリアチャレンジ中の桃太郎、無駄な戦いはしたくありません。大体、よく考えれば水晶の欠片の在処くらい、攻略本でちょちょいと調べりゃ済む話です。よし。
ここはノーカンってことで、さっさと大江山に向かっちゃおう。
そう判断した桃太郎、踵を返してひえんの術を使います。静かの村の位置は覚えたので、次からはまたこの術で飛んでこられるわけですね。いい時代になったもんだ。
で、すずめのお宿2に舞い戻った桃太郎、ひえんの塔へ向かうときと同じ要領で、文字どおり前半最大の山場、大江山へと歩を進めます。いやあ、こういうときはサクサク進んで行けるのがやり込みプレイのいいところだなあ、と鼻歌交じりの桃太郎。
が、そんなに甘くないのが人生というものです。
大江山の入り口には、
苦虫を噛み潰したような顔の地蔵菩薩が待っていました。
あれ……なにかお怒りですか地蔵様?
「
桃太郎よぉ。お前、なんかここに来るまでにやり残したことがあんじゃねえのか?」
え? 別に「月の鏡」なんかいらないし金太郎も平和に暮らしてたと思いましたが。
「
わかってんじゃねえか! お前な。そんな我が儘でコンピュータRPGがやってけると思ってんのか。この世を支配するのはあくまでフラグ様なんだよ。お使いイベントこそ究極の演出装置なんだ。それを無視するからドラクエ3の後半みたくバランスガタガタになるんじゃねえか。スクウェア見習え!」
いやいや地蔵様、もう合併してますから。それに本作はハドソンです。
「
ん? 悪いな。こちとらSFC時代のAIなんだ。とにかくまだここは通せねえんだよ。
大体甘いんじゃあねーか! 低経験値クリアを切り捨ててもかぐや姫を救うため婆娑羅王を倒す! それが使命じゃあねえのか? 「英雄失格」だな。
さっさと戻ってフラグ立ててこい!」
とまあ、けんもほろろに追い返されてしまいます。
ジョジョネタまで使いやがって!
仕方がありません。
金太郎はともかく、是が非でも「月の鏡」の試練を受けるしか道はないようです。
しかし、低経験値クリアももちろん諦めたくはありません。避けられる戦闘は極力避けるべきなのです。
やれやれ……
『「月の鏡」は手に入れる』
『経験値も回避する』
「両方」やらなくっちゃあならないってのが「英雄」のつらいところだな
覚悟はいいか浦島? オレはできてる
「……え? 私?」
状況を飲み込めていないのか、ぽかんと口を開ける浦島。いやあ、だって桃太郎が経験値を得られない以上、君がやるしかないじゃないですか。臥龍の試練を受けるのは1人なんですし。
「
いや……でもほら、私ってまだレベル1だし。きき金太郎だっているし」
金太郎も仲間になるときは1段でしょ。それにシステム上の問題で、金太郎よりも後から仲間になるはずだった浦島の方が初期能力値が高い。なにより、浦島の方がレベルを上げるのに必要な経験値量が多い分、
レベルが上がりにくいから低レベルチャレンジには向いているわけだよ。
「
……本気ですか?」
本気。正直、プレイヤーも泣きたい気分だから。
「
……わかりました。やるだけやってみましょう」
そんなわけで、舞い戻ってきた桃太郎一行。臥龍に会いに祠へ向かいます。
誰が試練を受けるか、の問いに浦島が答え、単身地下へと潜っていきます。
洞窟の奥に、臥龍が眠っていました。
「月の鏡を欲するのはお前か?」
「
はい! そうですよ!」
やけくそ気味の浦島。臥龍はゆらりと鎌首を擡げます。
| 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
臥龍 | 345 | 90 |
90 | 165 |
55 | 750 |
術 |
ふういんの術
|
|
| 段 | 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
浦島 | 1 | 48 | 9 |
60 | 51 |
14 | 0 |
装備 |
モリ(攻33) 漁師の着物(守23) 赤はちまき(守5) シカの足袋(守13)
|
きびだんご×8
|
瞬 殺 !
「
お前はまだ力が足りん、だそうです」
あー……、やっぱり?
「
さすがにこのチャレンジは無謀かと思われますが。今のままじゃ、よっぽどの奇跡でも起きなきゃ勝てませんよ。せめて私を3段くらいまで上げてから挑戦された方が」
しかし、そうなると桃太郎まで余計な経験値を得なくてはならなくなるわけですよ。かといってまた
「本」でドーピングするのも悔しいところ。
「
そこはそれ。金太郎の村ですよ。あそこには獄卒との強制戦闘があるので、無理なく私のレベルを上げられます」
おお。さすがは知将として名高い浦島、目の付け所が鋭いです。だがまあそれは最後の手段として取っておくとして、とりあえずはアイテムを駆使して頑張ってみようよ、人間なにごとも努力だよ、とゴネる桃太郎。実は
面倒臭いことが嫌いなだけなのですが。
ということで、浦島の村に戻った桃太郎たちは宿でじっくりと計画を練り直します。
<浦島強化計画 問題点とその対策>
(1)体力維持
まずはこれです。臥龍の攻撃によって、浦島は
毎ターン35P弱のダメージを受けます。素早さでも完全に負けているため、回復しなければ2度の攻撃でやられてしまいます。
そのうえ臥龍は
最初に必ずふういんの術を使ってこちらの術を封じてきます。現時点の浦島が使える唯一にして頼みの綱の術、きんたんが封じられてしまうのです。ふういんの術の効果は5〜8ターンほど続くので、その間の回復はアイテムによってまかなわなければなりません。
(2)打撃力
続いて相手に与えるダメージ量。現時点ではこっちの攻撃力60に対して、
臥龍の守備力は165。尋常じゃありません。掠り傷も負わせられるかどうかって感じです。
「
……待ってください。ちょっと砂浜の方へ来てもらえますか」
先程から何事かを思索していた浦島が、そう切り出しました。彼は村の海岸沿いに来ると、北側の砂浜を探りだします。
「
えーと、この松から東に2歩の南に1歩……と。ここを掘れば……あったあった。こんなこともあろうかと、ここに武器を隠しておいたんです」
と掘り出したのは「夕凪のモリ」。攻撃力+50、戦闘中に道具として使うと仲間一人の体力を16回復できる効果もある優れものです。
「
特殊効果はともかく、モリ系武器は2回攻撃も出来るし、これで少しは攻撃力の足しになるんじゃないですか?」
さすがは浦島です。ちなみにこれと対になるもう一本のモリは寝太郎の村に隠してあるとのこと。まあそれは後ほど取りに行く話。とにかく攻撃に関してはこれと
「ハリネズミの玉」あたりを駆使するとして、当面の問題は(1)の体力です。
これについては桃太郎にグッドアイデアが浮かびました。桃太郎はといちやからあるアイテムを引き出してきます。それは、浦島の村と竜宮城を鬼たちの魔手から救った際に村人にお礼としてもらったアイテムの中のひとつ、「根性の玉」。
「根性の玉」
値段:希望の都で500両
効果:一回使い切りアイテム。持っているだけで、敵から受ける致命的ダメージを一度だけ体力1で踏ん張れる。
効果は上記の通り。これを所持しているターンには、たとえ
最大体力を上回るダメージを受けても戦闘不能に陥ることはありません。もちろん耐えられるのは一度きりなので複数の敵に集中攻撃を食らうとお仕舞いですが、1対1の戦いでは十分に効力を発揮します。ただし、勿論のことながら1つだけでは足りません。道具袋の兼ね合いもありますが、最低3つは確保したいところ。
このアイテムが茶店に並ぶのは希望の都ですが、現段階でも入手する方法がふたつだけあります。
ひとつはお供の
サルの覚える特技「何かさがす」。お供は能力値が一定値に達すると特技を覚え、フィールド画面で「きびだんご」を与えるとそれを披露してくれます。「何かさがす」を発動するとサルはパーティを離れ、任意で様々なアイテムを拾ってきます。探せるアイテムの種類は桃太郎の段数によって変わりますが、20段以下の場合なら1/64の確率で
「根性の玉」を探し出してきてくれるのです。
しかし、まずそこまでサルを鍛え上げなければなりませんし、一度の探索に結構な時間と「きびだんご」を1つ消費するので、あまり能率的な方法とはいえません。よって、ここではもう一つの方法を使い、
「根性の玉」を入手します。
――その方法とは、浦島の村の
神社にある「おみくじ」です!
このおみくじ、1回100両とぼったくりもいいところですが、引いた内容によって桃太郎たちに様々な変化が訪れます。
大吉 | (2/64) | 天から道具が降ってくる。 8種類の中から一定の確率で選ばれ、合計8回降ってくる |
末吉 | (3/64) | 人気度が1上がる |
吉 | (4/64) | 天から金が降ってくる。1〜128両の間で、8回降ってくる |
小吉 | (7/64) | 全員の技と体力が全回復 |
凶 | (32/64) | 全員の技が半減 |
大凶 | (16/64) | 所持金が半減 |
狙い目は、ズバリ大吉。引いた瞬間、天から8つのアイテムが降ってくるのですが、その種類と確率(
及び簡単な説明)は以下のようになっています。
- きびだんご (20/64) 体力30回復&お供に活用
- 金のなる木 (12/64) 戦闘終了時に得られる金が2倍に
- ふういんの玉 (8/64) 敵の術を封じる
- 身代わり地蔵 (8/64) 所持者の代わりに毒や麻痺を受け消滅
- 仙人の桃 (6/64) 技20回復する「仙人のかすみ」強化版
- 万能丹 (5/64) 対象1人の戦闘不能以外の全ての状態異常を治す
- 自在天の石 (4/64) 天気を自由自在に変更
- 根性の玉 (1/64) 致命的ダメージを体力1で食い止める
はい、ここで
「根性の玉」が出てきます。入手の確率としては2/64×1/64×8で……1/256か。けっこう少ないですね。
まあしかしおみくじは神社の境内にあるのでセーブは楽だし、引いた瞬間に結果がわかるし、万能丹や身代わり地蔵が手に入れば売ってお金に換えたりと
楽しみがありリスクも少ないので、とりあえずこれで頑張ってみましょう。あまりにも手に入らないようならそのときにサルに切り替えるということで。
さて、まず
大凶が恐いので1000両ほど残してあとはといちやに預け、レッツおみくじ!
- ・ちまちまおみくじを引く
- →大凶などが出る
- →無視して引き続け、所持金が100両以下になったらリセット
- →吉が出る
- →所持金が2000両以上になったらといちやに1000両預け、セーブしてリトライ
- →大吉が出る
- →アイテムがいっぱいになったら売りまくって得た金をといちやに預け、セーブしてリトライ
いやあ、程良いところで吉が出て金が増えるので、波に乗ればパチスロっぽく続けられますな。金が貯まる貯まる! うはは!
「根性の玉」はなかなか降ってきませんが、ちょくちょく手に入る「仙人の桃」がけっこうおいしい。これは
「仙人のかすみ」の強化アイテムなので、売らずに
大江山攻略に向けて貯蓄しておきましょう。
程良いトライで2つほど
「根性の玉」を手に入れた桃太郎、そろそろいいかと腰を上げます。
その他、諸々のアイテムを揃え、浦島リベンジの準備が整いました。
| 段 | 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
浦島 | 1 | 48 | 9 |
77 | 51 |
14 | 0 |
装備 |
夕凪のモリ(攻50) 漁師の着物(守23) 赤はちまき(守5) シカの足袋(守13)
|
根性の玉×3 ハリネズミの玉×2 きびだんご×3
|
臥龍よ……
ついに浦島の本領を見せるときが来たようだな!
「
さあ、来なよ、番人――」
「再び古の試練を受けに来たか……よかろう」
| 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
臥龍 | 345 | 90 |
90 | 165 |
55 | 750 |
術 |
ふういんの術
|
|
| 段 | 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
浦島 | 1 | 48 | 9 |
77 | 51 |
14 | 0 |
装備 |
夕凪のモリ(攻50) 漁師の着物(守23) 赤はちまき(守5) シカの足袋(守13)
|
根性の玉×3 ハリネズミの玉×2 きびだんご×3
|
秒 殺 !
「
きゅう〜」
臥龍の本領を見せ付けられたようです。
やっぱり攻撃力がネックでした。
「ハリネズミの玉」の効果が
存外に早く切れるのです。「夕凪のモリ」の攻撃力を持ってしても1P以上のダメージを与えられないこともわかりました。
「
ついでに言わせてもらいますと……そもそも最大体力が低すぎて満足に攻撃態勢に持っていくことすらできません。「きびだんご」の回復量が敵から与えられるダメージ量に負けているので、「根性の玉」の効果が十二分に発揮されないんです」
きんたんの術(40回復)ならギリギリ勝てるけれど、封印されてしまうからなぁ。
「
桃太郎さんなら、お供のキジのサポートが期待できるんでしょうけれど、私にはどうしようもありませんよ」
と浦島は言いますが、実は
仙人の修行やこういった試練系のイベントではお供のサポートは得られないのです。どのみち桃太郎が出張るようではやり込みが成り立ちません。
思った以上の難題に唸る桃太郎。せめて、体力が全回復する「恒河沙の玉」クラスのアイテムがあれば……
「
そんなもの、冒険前半で手に入るわけありませんよ。まあ霊験あらたかな神社の縁の下でも探ればひとつぐらい出てくるかも知れませんが、そんな貴重なアイテムをこんなところで浪費するのは心苦しい……というか最大体力が低いんじゃ明らかに使い損です」
そうだよなぁ。
「
もういいじゃないですか、桃太郎さん。私がレベルを上げれば済む話です。これなら本来のやり込みにも支障が出ないわけですから」
だって悔しいじゃないか。君だってレベル1でボス敵の1人や2人倒してみたいだろ。
「
そりゃまあ、桃太郎さんですら成し得なかったわけですから。……しかし今回は随分と往生際が悪いですね。もしやまだ奥の手を隠しているのでは?」
むむ、バレたか。にやりと笑う桃太郎。
その通り。どうやら――奴を蘇らせるしかないようだな。
「
奴――って、ま、まさか……」
そう。足柄山の野獣共を従える豪傑、
坂田金時!
「
坂田金時! ――って、要は金太郎じゃないですか」
うん。ようやく奴が役に立つときが来たわけだ。さあ浦島、金太郎の村に飛ぶぞ!
「
はあ」
「うるるらぁ〜! 死ねい桃太郎!」
足柄山の洞窟の最深部で襲い来るカルラの手先、竜燈鬼!
| 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
竜燈鬼 | 364 | 0 |
87 | 37 |
35 | 730 |
特技 |
鬼道・吸い取り、竜攻撃
|
|
| 段 | 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
桃太郎 | 11 | 75 | 40 |
111 | 88 |
31 | 3558 |
装備 |
鎖切りの刀(攻48) 一枚胴(守20) 赤はちまき(守5) シカの足袋(守13)
|
仙人のかすみ×2 きびだんご×3
|
滅 殺 !
「あれェェェ! なんでオレ
中ボスなのにこんなにあっさりやられてんのォォ?」
塵と化す竜燈鬼。
ふっ。もうこのパターンにプレイヤーが飽きたからさ。
桃太郎はレベルがあがった!
ひにくをおぼえた!
| 段 | 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
桃太郎 | 12 | 83 | 43 |
117 | 91 |
33 | 4288 |
装備 |
鎖切りの刀(攻48) 一枚胴(守20) 赤はちまき(守5) シカの足袋(守13)
|
|
「
さすがですね桃太郎さん。どういうわけか知りませんが私は洞窟入ってすぐの獄卒戦で気を失い、洞窟内で新しく仲間に入った筈の金太郎はダイダ王子に打ちのめされた様子なのに、たった一人であの強敵竜燈鬼を倒してしまうとは!」
説明的な台詞をありがとう浦島。まあ夢と違って
今回は11段、しかも静かの村で
強力な装備を入手していたお陰で、思ったよりもあっさり勝てちゃいました。
「
夢……ですか?」
うむ。まあ細かいことは置いておいて、これで金太郎の村にも平和が戻るわけだ。桃太郎は金太郎を捜します。金太郎、あれ、金太郎はどこだ? 戦闘不能状態でもイベント中は行動できる筈じゃ――
「
ああ、彼ならあっちの隅でうずくまってますよ」
あんな
裸同然の恰好しているからお腹でも壊したのでしょうか。様子を見に行く桃太郎たち。
「
……どうせオラなんか……なんの役にも立たねえんだ……」
あれ?
「
どうやら拗ねてるようですね」
くっ……キャラに合わんことを。仕方ないな。桃太郎は彼の元へ駆け寄ります。
「
ほっといてくれ。オラなんか……パーティに必要とされてないんだ!」
いやいやそんなことないって。この冒険を成し遂げるには君の助力が不可欠なんだよ。
「
嘘付くんじゃねえ! だって本当はオラ、浦島よりも先に桃太郎の仲間になる予定だっただ! この旅日記で言えば、第4回で仲間になってた筈が、もう7回じゃねえか! どうせフラグの都合で仕方なく回収に来ただけなんだ!」
見た目に似合わず鋭い洞察力を見せる金太郎です。
ええと……まあ当たらずとも遠からずだけどさ、きっとこれから大活躍するんだよ。大江山の酒呑童子とか強敵だし、絶対出番あるって! 必死の桃太郎。
「
……本当か?」
本当だとも! さあ顔を上げて。早く村に戻ってみんなに君の元気な顔を見せてあげるんだ。ほら「きびだんご」もあげるから。
「
……わかった」
相変わらずワンパターンな懐柔を計る桃太郎ですが、彼は半信半疑ながらも納得し、村の方へ戻っていきました。
ふう――やれやれ。これでようやく村祭りが復活するぞ――
「
……なに企んでんです、桃太郎さん」
なんだよそんな企んでるだなんて人聞きの悪い
その通りだけどさ。
邪悪な笑みを浮かべる桃太郎。なあに、別に金太郎をどうこうしようという話じゃない。村祭りの縁日夜店に用があるんだよ。
金太郎の村は、常時ハレ。いつでも村の中心で祭が開催されています。櫓の周りには夜店が建ち並び、1回100両で様々なアトラクションに挑戦できるのです。
<夜店アトラクションリスト> |
|
・桃 福 笑 い | 桃太郎の顔パーツを目隠しで並べる |
・桃カルトクイズ | 桃伝シリーズに関するカルトクイズ |
・ポコポコジャンケン | じゃんけんと攻撃&防御ゲーム |
・桃 的 当 て | 射的。激ムズ |
もちろん、ミニゲームで高得点を取れば、
点数に見合った景品が進呈されます。そしてその中には、茶店ではお目にかかれない貴重なアイテムも幾つか混じっているのです。
今回桃太郎が狙っているアイテムは「強力丹」。仁丹系アイテムの効能は、状態異常を回復するものがほとんどですが、この「強力丹」だけはちょっと異色です。
「強力丹」
店で売っていない。売値は7500両
効果:一回使い切りアイテム。戦闘中に使うと仲間一人の体力・技を最大値を超えて回復する。
具体的には現在の体力・技最大値のそれぞれ1.5倍まで回復。
要するに強壮剤なんですね。一度きりですが、普段以上の持久力が発憤するわけです。これを現在の浦島に使うと、
体力48→72、技9→13になるため、35P弱のダメージを2ターン食らってもまだ生存していられます。1ターンかけて回復するとしても、攻撃に1ターン割くことが出来るわけです。
「
成る程……確かにこれはキーアイテムになり得ますね。でも桃太郎さん、夜店の景品リストを確認しても、「強力丹」らしきアイテムは見当たりませんけど」
ん? ああ、実際に景品として狙うのはこっちのアイテムだよ、と桃太郎、「ギヤマンの玉」というアイテムを指さします。
「ギヤマンの玉」
「からくり玉」の強化版。店で売っていない。売値は900両
効果:一回使い切りアイテム。使うと、以下の8種類のアイテムのうちどれかに変化する。
- 仙人の桃 「仙人のかすみ」強化版。技20回復
- 山嵐の玉 「ハリネズミの玉」強化版。2〜3ターンの間、受けたダメージ分を相手に返す
- 千両箱 使うと1000両入手。ただし売ると500両
- 秘伝書 「本」の強化版。心の数が255増える
- 人気の戦豆 人気度が1〜3上がる
- 隼の玉 2〜3ターンの間、連続攻撃ができる
- 強力丹 1人の体力・技を1.5倍まで回復
- 恒河沙の玉 1人の体力・技を全回復
この変化アイテムの中に
「強力丹」が存在します。つまり、例によってこのアイテムに変化するまでリセットを繰り返すことになるわけですね。
「
相変わらず地道な作業ですね。しかも、「ギヤマンの玉」が当たる夜店は……」
浦島が気付いた様子。そう、なにを隠そう、
「ギヤマンの玉」を景品として掲げているのは
難易度バカ高のポコポコジャンケンだけなのです。まあ桃的当てじゃなかっただけラッキーでしたが、
「ギヤマンの玉」は
最高得点を出さないともらえません。辛い戦いになる……桃太郎はそう悟ります。
さて、ここで皆が恐れるポコポコジャンケンのルールを説明しておきましょう。
・まず夜店の商人と桃太郎がジャンケンをします。中央にはハンマーとタライが置いてあり、ジャンケンに勝った方がハンマーで相手を叩き、負けた方はタライを被って防御します。
・
ジャンケンの結果に関係なく、攻撃が成功した側、または防御が成功した側に10点が加算されます。
・また、攻撃と防御の行動を間違えた場合、相手側に5点が加算されます。
・
勝負は10回戦行われ、桃太郎が獲得した点数と商人が獲得した点数の差が最終得点となります。
・
「ギヤマンの玉」の得点は100点。よって、全ての対戦を攻撃あるいは防御しきらなくてはなりません。
「
これって……成功するのは神業に近いのでは?」
ううむ。前半戦は商人の動きがノロいので選択ミスさえしなけりゃいいんだが、後半になると
人が変わったように素早くなるからな。
「
相手はコンピュータ……げふんげふん、からくりみたいな動きをしますからね。しかも、このゲームは律儀に「あいこ」も出てくるので、勝負が長引くにつれ心理的プレッシャーも募ります」
ま、とにかくやってみようよ、と桃太郎は100両を手に夜店に向かいます。
――5分後。
「
どうでした、桃太郎さん」
そう訪ねる浦島に見せる桃太郎の表情は芳しくありません。いやあ、8回戦までは行ったんだけどね。やれやれ……まあこんな簡単にいけば苦労はしないさ。ほら浦島、残念賞の「山嵐の玉」。
「山嵐の玉」
「ハリネズミの玉」の強化版。店で売っていない。売値は375両
効果:一回使い切りアイテム。戦闘中に使うと、2〜3ターンの間、受けた分と同量のダメージを相手に返す。
「
これ、結構有用ですね。ストックしておきましょう」
むむう、長期戦を見込まなくちゃならんなぁ……と手持ちの1000両を引っ張り出す桃太郎。
「
無茶は禁物ですよ、桃太郎さん」
――30分後。
浦島ぁ! 早くといちやから金下ろしてこい、2000両!
「
桃太郎さん、さっきおみくじスロットで儲けた分、全部擦っちゃいますよ」
ならリセットだ! もう一度やり直しだっ!
「
あまり熱くなると返って負けが嵩みますって」
そんなことはないっ!
もう少し…… もう少しだった……!
次は勝てる……!
ここで引く手はないっ……! 勝てるんだからっ……!
常勝っ……! それはもう……
見えているっ……! オレは負けないっ……!
「
哀れな……哀しいほどの博奕ジャンキーぶり……」
本人だけが妄想に気付かない桃太郎に困惑する浦島。
「
どうするだ浦島」と金太郎。「
このままじゃ桃太郎は借金まみれで足柄山地下の強制労働施設に入れられるぞ」
「
そんな恐いものがあったんですかあそこ? ――仕方がありませんね。なるべく穏便に済ませたかったんですが……金太郎、ちょっと宿まで行って宿泊予約を取ってきてくれませんか」
「
泊まんのか?」
「
このギャンブルは一筋縄ではいかないようですし、村に暫く逗留してじっくり勝機を窺った方がいいでしょう。桃太郎さんには私から話を付けます」
「夕凪のモリ」を構える浦島。
「
(話を付ける姿勢に見えねえが……)わかった」
もう少しで攻略なんだ……!
注ぎ込めっ……! オレにっ……!
誰でもいいから……貸せっ……!
オレに金を貸せっ……!
勝負しろっ……! オレで……!
「
はい、今日は終了ですよ桃太郎さん!」
ドリュッ!
あれ……なんかお腹からモリが……
「
どうもお騒がせしましたー」
な……
何じゃこりゃぁーっ!
「
はいはい工藤ちゃん、行きますよー」
浦島は瀕死の桃太郎を宿屋に寝かしつけ、夜店へと戻ってきます。
「
さて……では始めますか」
――3週間後(リアルに)
腹に包帯を巻いた桃太郎がよろよろと宿屋から出てきます。
いやあ、なんだか酷い目にあったなぁ。良く覚えてないけど、金太郎の話だと、村の石段辺りで『悪杖』とかいう
通り魔に後ろから襲われて、通帳と有り金全部奪われたとか……世の中には悪いことする鬼もいたもんだ。まさに鬼!
「
ああ桃太郎さん、こんなところにいたんですか」
と近付いてくる浦島。その両手には、キラキラ輝く
「ギヤマンの玉」が1つずつ乗っています。
「
見てください、やりましたよ。桃太郎さんが療養している間に、なんとか夜店の親父を打ち負かしました」
おおおおお! すごいじゃないか浦島! やはり持つべきものは仲間だな。と、涙ながらに喜ぶ桃太郎。
アトラクション代金の出所などにはまったく疑問を抱いていないようです。
「
と、とにかくこれで「強力丹」を生成できるな。準備万端だ」
涼しい顔の浦島とは対照的におどおどと金太郎がそう纏めようとしますが、桃太郎は首を振ります。
まだだ。もうひとつ、
最後に必要なアイテムがある。と、夜店に近付いていく桃太郎。目当てのゲームは、桃カルトクイズです。
桃カルトクイズは、桃太郎シリーズ全作のデータからチョイスされた3択問題が5問出され、その正解数が得点となるお手軽アトラクション。無論、全シリーズで主役を張っている桃太郎にとっては良いカモです。たとえ桃太郎シリーズの知識がなくても、
問題の絶対数が少ないため、何度か挑戦していればそのうちに全問正解できるようになります。
うはは。反射神経の必要ないゲームは楽でいいわぁ。と満足顔の桃太郎、見事に全問正解を勝ち取って満点商品を沢山抱えて出てきます。
「
桃太郎さん、それは?」
うむ。これは「びっくり玉」といってな。低レベル戦闘での頼みの綱だ。
「びっくり玉」
店で売っていない。売値は525両
効果:使用回数ランダム。戦闘中に使うと敵に1〜128Pのダメージを与える。
敵の守備力は無視される。
「
こんな奥の手があったんですか。初めから教えてくれれば……」
うん。しかしこれは完全にギャンブルだからね。1〜128の間ってことで、期待値は……64.5だけれど、その数値がコンスタントに現れてくるのは数十回使った場合だろう。
アイテム持ち数制限がある以上、無駄には持てないし、使用回数ランダムとはいえ、保って2〜3回だからね。
「
成る程。「強力丹」で手持ちの回復アイテムを減らすことができて初めて持つメリットが現れたわけですか」
「
お、オラは……このレベルの話題にはついて行けねぇ!」
ともかく、本当にこれでようやく全ての準備が整ったようです。桃太郎たちはひえんの術で、すっかりお馴染みになった静かの村へと飛び立ちました。「月の鏡」入手バトル、いよいよ最終ラウンドです。
何よりも『困難』で……
『幸運』なくしては近づけない道のりだった……
おまえに近づくという道のりがな……
対峙する浦島と臥龍。体力差は約1:7。
段の差は……計り知れず。
浦島自身、もうあとがないことを理解しています。
今ここに、最後の挑戦が果たされようとしているのです。
BATTLE 11 臥龍
| 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
臥龍 | 345 | 90 |
90 | 165 |
55 | 750 |
術 |
ふういんの術
|
|
| 段 | 体力 | 技 | 攻撃 | 守備 | 早さ | 心 |
浦島 | 1 | 48 | 9 |
77 | 51 |
14 | 0 |
装備 |
夕凪のモリ(攻50) 漁師の着物(守23) 赤はちまき(守5) シカの足袋(守13)
|
根性の玉×2 山嵐の玉×2 強力丹×2 びっくり玉×2
|
「またお前か。桃太郎……とかいう勇者はどうした。鬼に屈したか?」
「
あんたには関係のないことさ。何故ならあんたはここで――私に倒されるからね」
臨戦態勢を取る浦島。
「よかろう。古のみことのりを果たして見せよ!」
- 臥龍は持ち前の素早さで、ふういんの術を唱えます。
- 浦島は「山嵐の玉」を使い、敵のダメージを打ち返す準備を整えます。
臥龍が1ターン目でふういんの術を掛けてくるのはお決まりなんですが、ここでいきなり有り難いことが起こります。
ヒラリ!
なんと浦島、ふういんの術を
紙一重でかわしました!
新桃世界では術も回避できるのです! 驚愕の事実!
「なにィーッ!」
「
食らえ、「山嵐の玉」! これであんたの攻撃は私と同時にあんた自身にも返っていく!」
まさに上り調子の浦島。しかしふういんの術を食らわなかったのは朗報です。作戦ではこのあとすぐ
「強力丹」の出番が来るはずだったんですが、急遽予定変更。
そう、回復術が使えるということは、今まで無駄になっていた浦島の
技9Pが存分に役に立つということ。しかも
「強力丹」を使えば技最大値も増えることになるので、当分回復には困らなくなったのです。これで『術が解けるまで防御』という戦法は捨てられました。
そんなわけで臥龍から33P程のダメージを食らった浦島、
「山嵐の玉」効果で同じだけのダメージを相手に与えつつ、きんたんの術で体力全快に戻ります。
(現在の臥龍のダメージ:
33/345)
きんたんの術は消費3なので、3ターン同じことを繰り返せます。
「山嵐の玉」も順調に効果を発揮。4ターン目が終わった時点で、ちょうど技と
「山嵐の玉」の効果が同時に切れました。
(現在の臥龍のダメージ:
99/345)
ここからが
作戦の見せ場です。
まずは浦島がダメージを食らいますが、今ターンはリフレクトも回復もなしです。残り体力14で、一つ目の
「びっくり玉」を炸裂させる浦島。
「
行けっ!」
バシュッ!
ダメージ55! なかなかです。
「小賢しい小道具など使いおって……」
「
あんたも今までさんざん卑怯な術に頼ってたんだ。これくらいは大目に見て貰わなきゃね!」
(現在の臥龍のダメージ:
154/345)
しかし、運悪く一つ目の
「びっくり玉」は1回使っただけで壊れてしまいました。
臥龍の攻撃は、浦島の残り体力を根こそぎもぎ取ります。しかしその瞬間、懐の
「根性の玉」が砕け散り、浦島は体力1で踏み止まりました。
そして、ここで
「強力丹」です。浦島の体力1→72、技0→13へと超回復!
「
まだまだ行ける!」
「ぬう……」
もともと、攻撃系アイテムを使ったターンには回復が行えないため、臥龍の攻撃を2度食らっただけで体力が尽きる浦島が
「山嵐の玉」を使うチャンスは1ターン目だけだったのですが、
「強力丹」のお陰で2ターン保ちこたえられるようになった以上、この時点での
「山嵐の玉」は非常に有効です。
あとは、これがどのくらい保ってくれるか……
(残りアイテム:根性の玉×1、強力丹×1、びっくり玉×1)
2〜4ターン目と同じく、敵へのダメージは
「山嵐の玉」に任せて、浦島は回復に専念します。72あった体力ですが、これはあくまで
「強力丹」の効果なので、きんたんの回復が及ぶのは
最大体力の48までです。
(現在の臥龍のダメージ:
219/345)
ダメージ的には、ようやく折り返したというところでしょうか。9ターン目の終わりで、早くも
「山嵐の玉」が砕け散りました。
情勢が悪いです。こんなことなら、
「びっくり玉」の代わりに
「山嵐の玉」をもう一つ余分に持ってくるべきでした……が、今更後悔しても遅い。ふういんの術を回避するなんて幸運、読めたはずもないですし、こうなったらこのまま突っ走るだけです。
さて。もう浦島に残された攻撃手段はこの
「びっくり玉」1つしかありません。
「
頼むから壊れないでくれよっ!」
バシュゥ!
ダメージ56! さっきと同等。これが続けば……
しかし――浦島の思いも空しく
「びっくり玉」は
音を立てて砕け散りました。
(現在の臥龍のダメージ:
275/345)
「
くっ……」
身を切り裂く臥龍の爪のダメージによろめく浦島。ここまでか……
「根性の玉」で臥龍の一撃を持ちこたえ、浦島は道具袋に最後に残った
「強力丹」で一時の超回復を得ます。
しかし――
万策尽きました。きんたんで体力を回復することは可能ですが、
「山嵐の玉」も
「びっくり玉」もなくては浦島に有効な攻撃手段はありません。回復を怠れば2ターン保たないため、無事に通常攻撃を繰り出せるのも次の1ターンのみ。
「どうした。もうお仕舞いか?」
「
…………」
「ならばお前はまだ私に相対する格ではなかったということだ。出直すが良い!」
臥龍の牙が唸ります!
臥龍の攻撃によって35Pのダメージを負いながらも、浦島は「夕凪のモリ」を構えます。
「
……やはり端から無謀な挑戦だったようですね。だいたい私は反対したんです。たったの1段で単身ボス敵に打ち勝とうなど、君子の所業ではない。奇跡でも起きなきゃ無理だってね。私くらい自分の身の程を知っている人間はいない」
「泣き言は……上で仲間に聞かせてやるがいい」
「
泣き言? なにを言ってるんです。本来なら私は今ここに立ってはいなかった。運良くあんたのふういんの術をかわせていなかったらね。こんな偶然、まず有り得ない。奇跡ですよ。既に奇跡は起こってるんだ。私は今、まさに自分の予測の埒外にいる。意外なことに――無謀な挑戦を成し遂げようとしてるところなんだ!」
臥龍の脳天目掛けて「夕凪のモリ」を振り下ろす!
1Pのダメージ!
「無駄だ」
「
モリの特性はっ!」
――2回攻撃!
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
構え直したモリを、浦島は渾身の力で突き上げた!
会心の一撃!
75Pのダメージ!
「なん……だとっ」
跳ね返すはずの切っ先に鱗を突き破られ、身悶える臥龍。
(現在の臥龍のダメージ:
351/345)
洞窟の中が目映いばかりの光に満たされていきます。
視界の全てがホワイトアウトし、音も熱も痛みも、全ての感覚が消え失せ――
飽和を迎えるが如く、光が収まりました。呆然と立ち尽くす浦島の前に、悠然と臥龍が浮かび上がります。
「古のみことのりは果たされた。持っていくがいい」
いつの間にか、浦島の手には古ぼけた一枚の鏡が握られています。
「
これが――「月の鏡」」
「大江山の門をくぐる資格もこれで得よう」
「
ありがとうございます」
「……お前はなかなか見所があった。また手合わせ願いたいな」
「
いえ。私は――御免被りますね。二度とこんな無茶をする気はありませんよ」
そう言って、浦島は疲れた笑みを見せるのでした。
臥龍、浦島1段(心:0)でクリア!
いやあ、さすがだね浦島くんは。もうハラハラドキドキですよ。
ずるずる。
「
見直しただ、浦島」
ずるずる。
浦島が洞窟から戻ると、桃金コンビは月見そば食べながら寛いでいました。
「
……まあね、大したことじゃありませんよ。2回ほど奇跡を起こしただけです」
うんうん。ヒーローものはこうじゃないとなぁ。しかしまさか浦島の回にこんなドラマチックな展開が待ち受けていようとは。
ずるずる。
「
今回は桃太郎も形無しだったな。姉ちゃん、月見もう一杯!」
ずるずる。
しかし、「夕凪のモリ」の攻撃力がなかったら会心の一撃でも
止めを刺すダメージ量には至らなかったわけで、まさに全ての伏線が生かされたバトル。ザ・バトルと呼んでも差し支えない。
ずるずる。
「
うんうん。ザ・バトルだ。あ、月見もう一杯!」
「いいから早く大江山行く準備しろや!」
そんなこんなで。幾多の幸運に恵まれながら、桃太郎一行は遂に序盤屈指の難所、大江山へと足を進めるのでした。
次回……「俺の屍を越えてゆけ!」に――ターゲット、ロック・オン!(続く) to top